自己破産(同時廃止)を申し立てる際に必要な書類について説明します。

 まず、申立書を初めとする主要な書類については、司法書士の側で用意します。以下の書類がそうです。

①申立書
②報告書(陳述書)
③家計収支表
④財産目録
⑤債権者一覧表
⑥滞納公租公課一覧表
⑦事業に関する報告書

①申立書

 破産手続を開始し、その手続を廃止する旨と、申立人を免責する旨の申立をしたいことを、裁判所に対して訴える、いわば申立書類すべての顔のような書類です。

 この申立書に、申立人の氏名住所・生年月日など主要な記載をし、裁判所に対して誰がどのような申立をしているか分かるようにします。

②報告書

 自己破産を申し立てるに至った経緯を細かく書いたもので、いわば申立書類の心臓のようなものです。多額の借金を負って返済できなくなったからと言って、必ず自己破産が通るわけではなく、相応の理由も必要となってくるからです。

 もっとも近年は、ギャンブル・浪費などの理由で返済不能になった債務者に対しても、免責決定が出るそうなので、相応の理由の内容とやらも曖昧になっているようですが、それでもしっかり記載しなければならないことに変わりありません。

 「破産申立てに至った事情」 については、わかりやすく記述しておくこと が重要です。特に債権者名簿での「借入時期」の記載と矛盾していないように確認しておく必要があります。

 例えば、「平成3年に初めて借金しました」 とありながら、債権者名簿を見ると、それ以前の借入れが記載されているといった場合です。

 また、免責不許可事由がある場合(疑いも含む)、裁量免責事由についてしっかりと記述しておくことが必要です。
 
③家計収支

 毎月の収入と収支を記載します。申立人がどのような生活をしているのか判断するための資料です。

 収入は、給与に限らず年金や家賃収入、株式配当金や利息に至るまで、すべての収入を記載します。支出は、家賃や食費、水道光熱費や電話代・新聞代、衣服代や交際費に至るまで、すべての支出を記載します。

 申立直前2か月分を記載するので、申立てが遅れた場合 、 作成し直すことが必要です。

④財産目録

 申立人のすべての財産を記載します。預金残高、保険、自動車、敷金請求権、有価証券、他人への貸金債権などです。

 詐害目的での財産の隠匿は免責不許可事由に該当するので(破252条1項1号) 、記載漏れがないように十分注意する必要があります。

 例えば、過払い金返還請求権などは記載漏れしがちであり、その有無ないし金額が明確でない場合も、過払いの可能性がある旨を明示しておくことが必要です。

 生命保険料の支払いや給与などは通帳で入出金がなされている場合が多いので、通帳をチェック して食い違いがないか確認することが必要です。

 保険の解約払戻金につ いては、自動車保険などの損害保険では払戻 しがない(いわゆ る掛け捨て)が通例なので、必ず払戻金計算書を用意しなければいけないわけではなく、生命保険の場合でも、契約年数に応じた払戻金の表が保険証券に記載されている場合があります。

⑤債権者一覧表

 すべての債権者の住所氏名と債権額および契約日など、借入状況がわかる資料です。

 虚偽の債権者名簿提出は免責不許可事由に該当するので(破252条1項7号)、債権者漏れがないように十分注意する必要があります。

 この点、依頼者によっては、「債務=借金」という固定観念があり、いわゆるキャッシングのみを負債と考え、ショッピングを除外する場合があるので、キャッシング以外の負債がないか確認していく必要があります。

 また、親戚や知人・勤務先等からの借入れを債権者名簿に記載することを嫌がらず、きちんと記載しておくことが必要です。

 サラ金や信販会社からの借入額については、法定利率で計算した額を記載するのが相当といえます。ただし、支払経過が明らかでなかったり、債権者との間で計算方法に違いがあるような場合、備考欄に債権者主張額を記載しておくのが適切です。

 債権者名や住所などが判明しない場合は、判明している範囲で記載します。

⑥滞納公租公課一覧表

 所得税、住民税、消費税、固定資産税や自動車税など各種税金の他、国民健康保険料、国民年金掛け金などについて滞納しているものがあるときは、この一覧表に記入します。

 滞納している税金等がないときは、「ゼロ」である旨を記載して提出します。

 税金等については、自己破産でも免責されず、将来に渡って支払う必要がありますが、今後の破産者の生活状況を推測する上で滞納税金の額は重要であるため、裁判所に報告することになります。

⑦事業に関する報告書

 事業をしている者、または過去に事業を行い、それによって破産に至った者については、事業に関する報告書を提出します。

 この報告書は、過去3年分の収支や従業員の有無、未払いの賃金や賃借料などを記載し、事業が破産に及ぼした影響などを知る上での資料となります。

土田司法書士事務所